韓国語を打つには、英語のアルファベットとは別の配列を使います。この手引きでは、 ハングルという文字の成り立ちと、2ボル式(トゥボルシク)配列の仕組み、 指の置き方、覚える順序を説明します。
韓国語で使う文字をハングルと呼びます。世界の文字の中でも、 誰が・いつ・なぜ作ったのかがはっきり分かっている珍しい文字です。 成り立ちを知っておくと、一つひとつの形に理屈が見えてきます。
ハングルが生まれる前、朝鮮半島では漢字で文章を書いていました。 しかし漢字は中国語を書くための文字であり、韓国語の音や文法をそのまま書き表すことができません。 漢字を覚えるには何年もかかります。その間ずっと子どもを学びに通わせられる家は多くありませんでした。 そのため、読み書きができるのは一部の人に限られていました。
1443年、朝鮮王朝の第4代王世宗(セジョン)大王が新しい文字を作り、 1446年に『訓民正音(フンミンジョンウム)』として公布しました。 「訓民正音」とは民に教える正しい音という意味で、当時はこれが文字の名前でした。
『訓民正音』序文の趣旨
我が国の言葉は中国と異なり、漢字と噛み合わない。そのため、民が言いたいことがあっても その思いを書き表せない者が多い。私はこれを哀れに思い、新たに二十八字を作った。 誰もが易しく習い、日々用いるのに便利であるようにと願うばかりである。
誰もが易しく習えるように——これがハングルの設計目的です。 そのため、文字の形は覚えやすいように理屈立てて作られています。
子音字は、その音を出すときの口・舌・のどの形をかたどって作られました。 まず基本の5子音字があります。
| 基本字 | かたどった形 | 音 |
|---|---|---|
| ㄱ | 舌の根が のど をふさぐ形 | k/g |
| ㄴ | 舌先が 上の歯ぐき につく形 | n |
| ㅁ | 口 の形 | m |
| ㅅ | 歯 の形 | s |
| ㅇ | のど の形 | ng(語頭では無音) |
そして、音が強くなるほど画を足していくという規則で濃音以外の残りの子音字ができています。
| 基本 | 画を足す | さらに足す |
|---|---|---|
| ㄱ | ㅋ | — |
| ㄴ | ㄷ | ㅌ |
| ㅁ | ㅂ | ㅍ |
| ㅅ | ㅈ | ㅊ |
| ㅇ | ㅎ | — |
ㄷ は ㄴ に一本足した形、 ㅌ はさらに一本足した形です。 形が似ている子音字は、音の出し方も仲間同士だと考えてください。
母音字は、東洋の考え方である三才(天・地・人)を表す3つの部品を組み合わせて作られました。
この3つを組み合わせると、次のように母音ができあがります。
| 組み合わせ | できる母音 | 読み |
|---|---|---|
| ㅣ の右に 点 | ㅏ | ア |
| ㅣ の左に 点 | ㅓ | オ(口を大きく) |
| ㅡ の上に 点 | ㅗ | オ(口をすぼめて) |
| ㅡ の下に 点 | ㅜ | ウ |
| 点が2つになる | ㅑ ㅕ ㅛ ㅠ | ヤ・ヨ・ヨ・ユ |
点が1つなら ア・オ・オ・ウ、2つなら ヤ・ヨ・ヨ・ユという関係です。 日本語の「あ→や」「お→よ」「う→ゆ」と同じ対応だと思えば覚えやすくなります。
なお、子音字と母音字の総称をここでは「字母」と呼びます。
作られたときは28字母でしたが、そのうち4字母 (ㆍ ㅿ ㆆ ㆁ)は時代とともに使われなくなりました。 現在の韓国語では24字母——子音字14と母音字10——が基本です。
基本の字母は24
子音字 14
ㄱㄴㄷㄹㅁㅂㅅㅇㅈㅊㅋㅌㅍㅎ
母音字 10
ㅏㅑㅓㅕㅗㅛㅜㅠㅡㅣ
この24字母に、基本の字母どうしを組み合わせてできた16字母が加わります。 新しい形を覚えるわけではありません。すでに知っている字母の組み合わせです。
組み合わせてできた字母 16字母
濃音字 5 同じ子音字を2つ重ねた字母
ㄲㄸㅃㅆㅉ
複合母音字 11 母音字を組み合わせた字母
ㅐㅒㅔㅖㅘㅙㅚㅝㅞㅟㅢ
まとめると、現代の韓国語で使う字母の数は次のようになります。
この40の部品、すなわち字母で、現代の韓国語はすべて書けます。キーボードもこの40字母を打てるように作られています。
「ハングル」という名前が付いたのは20世紀初め、言語学者の周時経(チュ・シギョン)先生によるものとされます。 ハンには「大いなる」「一つの」、グルには「文字」という意味があります。
韓国では『訓民正音』公布の日にちなみ、10月9日が「ハングルの日」という祝日になっています。 また、文字の作り方と使い方を説明した書物『訓民正音解例本』は、 1997年にユネスコの世界記憶遺産に登録されました。
ハングルは、アルファベットのように横一列に並べません。 子音字と母音字を四角い枠の中に組み立てて、1つの音節(1文字)を作ります。 この仕組みが、キーボード入力を理解するうえでいちばん大事なところです。
母音字の形によって、子音字を置く位置が決まります。 縦棒の母音字は右へ、横棒の母音字は下へ——これだけです。
子音字は実線の枠、母音字は破線の枠です。色でも分かれていて、 白が初声(はじめの子音字)、水色が中声(母音字)、黄色が終声=パッチムです。 枠の中の小さな文字は、その字母の音をアルファベットで表したものと、 子音字(子)か母音字(母)かの区別です。 左上から右へ、そして下へと読んだ順に並べると、そのまま音節の読み方になります。 タイプされた文字は、どの型でも、大きさは同じです。字母が増えるほど、一つひとつが小さく詰められます。
「ア」「オ」のように母音だけで始まる音でも、四角内の左上(または上)を空けたままにはしません。 音を持たない子音字 ㅇ を置いて形を整えます。
ㅇ+ㅏ=아 ㅇ+ㅗ=오 ㅇ+ㅣ=이
音節のいちばん下に敷く子音をパッチムといいます。 韓国語で「받침」とは支えるもの・下敷きという意味です。 日本語の「ん」「っ」に近い働きをしますが、種類はずっと多くあります。終声ともいいます。
ㄱㄲㄴㄷㄹㅁㅂㅅㅆㅇㅈㅊㅋㅌㅍㅎ
ㄳㄵㄶㄺㄻㄼㄽㄾㄿㅀㅄ
二重パッチムは2つのキーを続けて打つだけです。 たとえば 값(値段)は ㄱ ㅏ ㅂ ㅅ の4打で出ます。 専用のキーはありません。
日本語入力と比べると、この点が韓国語入力のいちばんありがたいところです。 左から右へ、上から下へ、あるいは、左上から右へ下へ——目で追う順にキーを打てば、パソコンが自動で四角に組み立ててくれます。 組み立てのための特別な操作は一切要りません。
한 = ㅎ → ㅏ → ㄴ (3打)
곽 = ㄱ → ㅗ → ㅏ → ㄱ (4打)
語を選んで「次の1打」を押すと、キーを1つ打つたびに文字がどう変わるかを確かめられます。
下の枠をクリックしてから、入力方法を半角英数字に変更のうえ、英字のキー(g k s など)をそのまま打ってください。 韓国語入力の設定をしていなくても、この枠の中だけはハングルに組み立てて表示します。 画面のキーボードをクリック(タップ)しても打てます。
ここは練習用の枠です。実際に文書を書くときは、次の項目のとおりパソコンに韓国語入力を追加してください。
韓国語を打つには、パソコンに韓国語入力を追加します。一度追加すれば、 キーを1つ押すだけで切り替えられるようになります。
日本語キーボードにハングルの刻印はありません。次のいずれかで対応できます。
韓国語の標準配列を2ボル式(두벌식・トゥボルシク)と呼びます。 「2つの組」という意味で、子音の組と母音の組の2つに分かれているという配列の作りを表した名前です。
キーの上の小さな文字は日本語キーボードの刻印と、子音(子)か母音(母)かの区別、 まん中の大きな文字がハングル、下がそのキーを打つ指です。 母音のキーは水色で示しています。 枠が黄色く、下の辺が太いキーがホームポジションです。
左で始まるものは左手、右で始まるものは右手です。 左手のキーは左の枠が太く、右手のキーは右の枠が太くなっています。 うすく見えている段(数字の段)には、ハングルは割り当てられていません。
色が出ない環境について。 パソコンやブラウザの設定によっては、上の図の色分けが反映されないことがあります。 ハイコントラスト表示(Windowsの「コントラストテーマ」、Macの「コントラストを上げる」)、 画面の色フィルタやグレースケール表示、配色を上書きするブラウザの設定や拡張機能、 それに白黒での印刷がこれにあたります。 そのときは下の辺が太いキーを目印にしてください。左から ㅁ ㄴ ㅇ ㄹ で始まる段がホームポジションです。
左手の小指から人差し指をそれぞれ ㅁ ㄴ ㅇ ㄹ に、 右手の人差し指から薬指を ㅓ ㅏ ㅣ に置きます。 日本語キーボードの A S D F と J K L の刻印と同じ位置です。 右手の小指は、文字のないキー(日本語キーボードの ;)の上に置いておきます。
ホームポジションだけで、よく使う字がそろっています。
ㅁ ㄴ ㅇ ㄹ ㅓ ㅏ ㅣ
子音4つと母音3つ。これだけで 어머니(お母さん)、 언니(姉)、나라(国)、 말(言葉)が打てます。
それぞれの指は、ホームポジションから上下の段へ伸ばして、また戻るのが基本です。 下の表は、各指が受け持つ文字の一覧です。
キーボードの上の段から順に並べています。 ホーム の印が付いた文字が、その指の定位置です。
いちどに全部を覚える必要はありません。次の順に広げていくと無理がありません。
ㅁ ㄴ ㅇ ㄹ ㅓ ㅏ ㅣ
この7つだけで 어머니(お母さん)、언니(姉)、 나라(国)、얼마(いくら)、 말(言葉)が作れます。 指を動かさずに打てるので、まずここで手の形を固めます。
ㅎ ㅗ
ホームポジションの内側にあるキーです。手首を動かさず、人差し指だけを伸ばします。 ㅎ と ㅗ が加わると 하나(一つ)、오늘(今日)… と打てる語が急に増えます。
ㅂ ㅈ ㄷ ㄱ ㅅ ㅛ ㅕ ㅑ ㅐ ㅔ
ㄱ ㅅ ㄷ は使用頻度がとても高い子音です。 ここを覚えると打てる語が一気に増えます。 감사합니다(ありがとうございます)が打てるようになります。
ㅋ ㅌ ㅊ ㅍ ㅠ ㅜ ㅡ
ㅜ と ㅡ は頻出の母音です。 ㅠ だけが左手にあることに注意してください。
ㅃ ㅉ ㄸ ㄲ ㅆ ㅒ ㅖ
濃音と、2つの複合母音です。数は少ないので最後に回して構いません。 詳しくは次の項目で説明します。
ハングルには大文字・小文字の区別がありません。 Shift は7つの字母を打つためだけに使います。
反対の手の Shift を使います。
キーの上が Shift を押したときに出る文字、まん中が Shift なしで出る文字、
下がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーだけが Shift で別の文字になります。
うすく見えているキーは、Shift を押しても何も変わりません。
ㄲ ㄸ ㅃ ㅆ ㅉ を濃音といいます。 のどを緊張させて、息を出さずに一気に発音する音で、日本語の小さい「っ」の後の音に近いものです。
| ふつうの音 | 濃音 | 語の例 |
|---|---|---|
| ㄱ 가 | ㄲ 까 | 꽃(花) |
| ㄷ 다 | ㄸ 따 | 딸(娘) |
| ㅂ 바 | ㅃ 빠 | 빵(パン) |
| ㅅ 사 | ㅆ 싸 | 쌀(米) |
| ㅈ 자 | ㅉ 짜 | 짜다(塩辛い) |
数字の段にはハングルがないため、韓国語入力のままでも数字はそのまま打てます。 Shift を押したときに出る記号も、お使いのキーボード(日本語配列など)どおりです。 韓国語のために新しく覚える記号はありません。
なお、句読点は日本語と違い、ピリオド(.)とコンマ(,)を使います。 「。」「、」は使いません。位置は英字入力のときと同じです。
パソコンは、打たれた子音がその音節のパッチムなのか、次の音節の頭なのかを、 その時点ではまだ判断できません。そこでいったんパッチムとして下に置いておき、 次に母音が来たら下から外して次の音節の頭へ移すという処理をします。
ㄱ → ㄱ ㅏ → 가 ㅁ → 감 ㅏ → 가마
ㅁ を打った時点では 감 と表示されますが、 次に ㅏ を打つと ㅁ が下から外れて 마 の頭に移り、가마(釜)になります。
ㅇ → ㅇ ㅓ → 어 ㄴ → 언 ㅈ → 얹 ㅔ → 언제
ㄴ のあとに ㅈ を打つと、 2つがくっついて二重パッチム ㄵ になり、 얹 という見慣れない字が現れます。 ところが次に ㅔ を打った瞬間、ㅈ が下から外れて 次の音節の頭へ移り、언제(いつ)に収まります。 얹 が見えているのはたった1打のあいだだけです。
二重パッチムがそのまま残る語もあります。たとえば 값(値段)は、 打ち終わりまで ㅄ が下に残ります。 下の子音字が外れて次の音節へ移るのは、次に母音が来たときだけです。
ㅎ → ㅎ ㅏ → 하 ㄴ → 한 ㄱ → 한ㄱ ㅜ → 한구 ㄱ → 한국
ㄴ と ㄱ はくっつけないので、 ㄱ は行き場がなく、いったん部品のまま横に立っています。 次に母音を打てば、ちゃんと音節に収まります。
Back Space を押すと、文字がまるごと消えるのではなく、 最後に打った部品が1つだけ外れます。 한 で1回押すと 하、 もう1回で ㅎ、もう1回で空になります。 打ち間違えたときは、間違えた部品まで戻れば直せます。
韓国語入力でまちがえやすい例を挙げておきます。
| まちがえやすい組 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| ㅐ / ㅔ | 今はどちらも「エ」に近い音で、耳では区別できない | 音ではなく語のつづりごと覚える。ㅐ=O、ㅔ=P |
| ㅓ / ㅗ | どちらもカタカナでは「オ」と書かれる | ㅓは口を大きく、ㅗは唇をすぼめる。指も別(ㅓ=J、ㅗ=H) |
| ㅜ / ㅡ | 隣り合っていて、どちらも「ウ」に聞こえる | ㅜ=N が左、ㅡ=M が右。N が先と覚える |
| ㅎ / ㅗ | 人差し指の内側で隣り合う(G と H) | ㅎは子音で左手、ㅗは母音で右手。手が違うと意識する |
| ㅠ の位置 | 左手にある唯一の母音(B) | 「左手で母音を打つのは ㅠ だけ」と例外として覚える |
| ㅈ / ㅊ | 形が似ていて、音も仲間(W と C) | ㅊはㅈに一本足した形。上の段がㅈ、下の段がㅊ |
| ㅂ / ㅍ | どちらもP・Bの音で紛れる(Q と V) | ㅍはㅂを横に倒した形。上の段がㅂ、下の段がㅍ |
| ㅅ / ㅆ | Shift の押し忘れ | 濃音は同じキー。打った字を見て、細いか二重かを確かめる |
| ㅇ の打ち忘れ | 音がないので、つい飛ばしてしまう | 母音で始まる音節は必ず ㅇ から打つと決めておく |
5分で構いません。長く続けるより、短い時間でやめておくほうが、また明日も開こうという気になります。 疲れたら無理をしないで途中でやめてください。毎日少しずつ進めることに意義があります。
打てない日があっても、それまでの練習が消えるわけではありません。 忙しくて間があいてしまっても、また始めればいいだけです。タイピング練習は「ゆるく・長く」が上達のコツです。
はじめは配列図を見ても構いませんが、手元は見ないでください。 画面と図だけを見て打つようにすると、指が位置を覚えます。
ハングルは1文字が1音節です。1字を打ち終えるまでを1つの動きとしてとらえると、 指の流れがなめらかになります。 한 なら「左・右・左」、국 なら「左・右・左」。 よく出てくる音節ほど、手が勝手に動くようになります。
意味のある文章を打つと、語の区切りやつづりが自然に身につきます。 同じ文章を何度も打つことで、頻出する語や語尾など類似の文字列の指の動きがスムーズになります。 韓国語は助詞や語尾の形が決まっているので、同じ並びを繰り返し打つうちに指が覚えてくれます。
打ちはじめによい言葉
| 語 | 意味 | 打つ英字キー |
|---|---|---|
| 어머니 | お母さん | d j a j s l |
| 나라 | 国 | s k f k |
| 한국 | 韓国 | g k s r n r |
| 사랑 | 愛 | t k f k d |
| 감사합니다 | ありがとうございます | r k a t k g k q s l e k |
| 안녕하세요 | こんにちは | d k s s u d g k t p d y |